施工不良が起きやすいアーバニー屋根の塗装
2020.10.2 金曜日
住宅の多くに用いられているスレート屋根。
このカテゴリーの中では少数派であり、弊社でも20軒に1回程度の割合で施工を行なう『アーバニー』屋根への塗装事例をご紹介します。
▲アーバニー
過去数年間だけ流通していたもので、通常のスレート瓦(コロニアル・カラーベストなど)と比較すると厚みがあるのが特徴であり、高級仕様の屋根として売り出されていました。
▲こちらはコロニアル・カラーベスト屋根の例
上記画像はコロニアルという流通量の多い一般的なスレート屋根。
アーバニーと比べると圧倒的多数の普及率であると感じます。
それもそのはず、アーバニー瓦はというと過去に流通していたものの一度廃盤をして数年後に再び販売されている背景があり、流通期間が少ないということが理由だと思います。
二度目の製造〜流通に至っても数年間の販売期間となっており現在では廃盤、最近では平成17年までしか製造はされていないとのこと。
理由は、アスベスト含有率を法基準にそって再販売したことで材質そのものの耐久性に大きな課題を残したことだといわれています。
いわゆるノンアスベスト建材のことで、当該スレートは一律して割れやすいのがその特徴でもあります。
スレートではパミールが有名どころでしょうか。
特にアーバニーの場合では高級ラインであることと相まって販売期間が少ないのが、普及率の少なさなのかもしれません。
今回のご依頼はノンアスベストの『アーバニーグラッサ(平成13年〜17年)』や、『ニューアーバニー(平成6年〜平成13年/石綿含有率0.1%〜1%)』ではなく、初期製造のアーバニー(昭和57年〜平成6年)への塗装工事です。
▲施工前のようす
●築年数から判断すると、おそらくは石綿含有率5〜10%のアーバニーであることから、強度的に問題ないことに加え10年以上前にも塗装工事をされていたという事もあり、瓦上への歩行および作業による破損のリスクは心配いりません。(強度チェック済)
十分に注意していたことも有り、施工中の割れもありませんでした。
▲高圧洗浄
●汚れ・チョーキング・脆弱な旧塗膜の剥がれ(死膜)除去を徹底的に実施します。
▲2日間の『洗浄後乾燥期間』を空け、高浸透プライマー塗布
●洗浄後乾燥期間とは水分を確実に蒸発させることで含水率を下げ、塗料の経日はく離を防止するために絶対必要な間隔のことです。
極端に言えば、「水の上に油を塗りつけてしまう事」を阻止するための回避策であり、品質を理解している施工店は確実に実施しています。
水分の蒸発が特に遅い『屋根の重なり部・旧塗膜が取れた後のスレート素地」に含まれた水分、つまり湿った材質に溶剤塗料(油性のイメージ)を塗りつけてしまえば間違いなく剥離することは、誰にでも想像がつくのではないでしょうか。
▲重なり部分へのハケ入れ
●画像は、ローラーが入りきらない細かい部分へのプライマー施工です。
すき間の奥の方にまで塗料を浸透・塗布させることで、経年しても安定した塗膜を維持することができますので絶対に行なうべき工程でもあります。
非常に手間と時間を消費してしまうため、じつに多くの施工業者が本工程を省略しています。
▲雪止め金具への防錆プライマー(白色部分)とタスペーサー挿入(黒い小さな部品)のようす
●サビの発生が確認された雪止め金具へは、研磨+特殊プライマーの使用により防錆(サビを防ぐ)効果と仕上げ塗料の密着性を上げる下地処理を実施。
タスペーサーとは毛細管現象による吸水を防止し、雨漏りを抑止するために必要な工程であます。
この毛細管現象によって引き起こされる雨漏りが非常に厄介で、室内側から確認することのできない『内部漏水』となっている住宅が多く見られます。
内部に水分の侵入を許してしまいますと木材の腐食が始まり、いずれシロアリやカビが発生する大きな要因となることで有名です。
とにもかくにも、塗替え工事をする際には屋根の内側に湿気が溜まることだけは絶対に阻止するよう、施工業者にお願いしてみて下さいね。
▲仕上げ塗料の施工(中塗り)
●上記工程を経てようやく塗料を塗っていきます。
塗り残しがないよう、厚みをつけながら丁寧に塗布することがポイント。
画像は遮熱塗料(パラサーモシリコン)の中塗り風景です。
弊社では全てのお客様の住宅に『遮熱塗装』または『断熱塗装』を実施しております。
▲仕上げ塗装(上塗り)
●最終仕上げである上塗りも丁寧に塗布し、塗膜性能を限りなく引き上げることに集中します。
この工程こそが次回のメンテナンス工事まで誰にも触れられず、且つ間近で見られることもない最終施工であることから後々までの全責任が弊社にのし掛かる、まさに手に汗握る重大な任務であると言っても過言ではありません。
そして毎回緊張するシーンでもあります。
▲施工前のアーバニー
▲施工 完了
以上がアーバニー屋根(初代)への塗装事例となります。
当該屋根はその形状から『割れるリスク』があることを考慮し、施工中や検査時の歩行などに十分な注意を要することが求められ、また重なり部分の多さから塗り残しによる経年はく離に加え漏水リスクに対しても理解しなければいけません。
そして各種下地処理〜仕上げ塗装までの工程すべてに注力することで、屋根をはじめとした建造物延命への大義を果たすことができるのです。
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