見ることができないからこそ見る
2019.1.26 土曜日 晴れ
塗装工事をはじめとした施工において、普段から気を付けていることの一つに【雨漏り対策】があります。
雨漏りとは住宅における不具合に対して1位2位を争うほどの大敵であり、決して看過できないことの代表格とも言えます。
そして、これが意外と目につかないような場所から建物内部へと、その魔の手を伸ばしていることも多々あるのです。
それでは、お施主さまの目につきにくく、施工業者でさえも気にしないような例を挙げてみたいと思います。
屋根の一種で、1階と2階の中間にある『下屋根』(上から撮影)
このような場所は日常で上る機会もそう多くはなく、足場を立ててからじゃないとなかなかたどり着けないような場所にあります。
そして雨漏り事故の発生個所のうち、多く挙げられている例でもあります。
上部からの雨しずくが当たっていたのか、緩衝材が設けられていたので撤去する事に
専門店としての勘ですが、9割位の割合でこのような場所になんらかの不具合要因があることが多いのですが、やはり今回もありました。
黄色は壁内含水の疑い部分
赤囲みはシーリング未施工の『すき間』
前回の業者さんが黒い緩衝材を撤去せず、露出箇所のみをシーリングしたことによる隙間が確認できます。(黄色矢印・ヨコ亀裂は目視時点での補修予定箇所)
赤囲み内のすき間ですが、この状態で放置してしまうことは『室内から確認できる雨漏り』『壊してみないと確認できない雨漏り』に関わらず、絶対に防止せねばなりません。
理由は、上から伝ってくる雨水をすき間に溜め込むことになってしまう為です。
金属下屋根の防錆塗装後、シーリング処理を施したようす
外壁塗装を終え、残るは下屋根の最終仕上げ塗装だけ・・・の段階
何をもってしても、上記のようにシーリングなどの防水対策が必要不可欠であり、こちらを無視してしまうということは建物にとって害悪以外の何物でもありません。
見過ごさない事こそが不具合の抑制方法に他ならない事実なのです。
それでも、リフォーム業界での施工トラブルの上位に『漏水事故』があるということも一つの事実であります。
「見過ごさない」といえばこんな話がありました。
ある大きな病院のお医者さんが、たまたま帰宅前に救急搬送されてきた患者を横目で見て、ふと気になったそうです。
「これは大変だな」
もう帰宅するその時だったので、そのまま帰ろうかどうか考えた末、自分が診ようと思いました。
若い当直医の先生方も居たそうなのですが、誰も担当したがらず「オレがやる」と。
そのお医者さんはベテランの医師で、自分の患者へは特に見落としがないように細心の注意を払うことができるプロ中のプロ。
そしてその患者は、2度も全身麻酔の限界時間まで大手術をしてもらい、たくさんの不具合や断裂・粉砕箇所を直してもらったそうです。
その医師が診ていなければ、ひどい後遺症が続き一生を不自由で暮らすことが確定していたそうです。
その患者は私です。
偶然にもその医師が通りがかっていたからこそ、そして、細部まで隈なく確認・修復手術をして下さったからこそ、今の人生があると断言いたします。
できることなら、あの時のお医者さんのような塗装屋になりたい。
職種も業態も何もかもが違いますが、この塗装という職業には特有の良さや存在価値があります。
そんなこともあり、現在でも見過ごしなどがないように細心の注意を払いつつ、お施主様への恩返しとさせて頂いております。